【なんで?】無機系塗料って100%無機じゃないの?
- matsutoryou

- 2 日前
- 読了時間: 13分

外壁塗装の塗料を調べていると、最近よく目にするのが「無機系塗料」です。
高耐候、高耐久、紫外線に強い。
そんな説明を見ていると、ひとつ疑問が出てきませんか?
「無機がそんなに強いなら、100%無機にしたら一番いいんじゃないの?」
たしかに、そう思います。
さらに、
「100%がダメなら、80%くらい無機にすればいいんじゃない?」
とも思いますよね。
でも実際に各メーカーの無機系塗料を見ていくと、「無機をできるだけ多く入れる」という考え方だけで作られているわけではありません。
無機と有機を組み合わせたり、フッ素樹脂やラジカル制御技術など、別の技術と組み合わせたりしています。
では、なぜ100%無機にしないのでしょうか。
そして、無機成分は多ければ多いほどいいのでしょうか。
今回は、
「無機系塗料って100%無機じゃないの?なんで?」
を、塗料販売店の目線から少し掘り下げてみます。
そもそも塗料って何でできているの?
まず無機の話をする前に、塗料そのものを簡単に整理してみましょう。
一般的な塗料は、大きく分けると、
樹脂
顔料
添加剤
水や溶剤
など、さまざまな材料からできています。
塗装したあとに塗膜を形成する中心となる樹脂。
色をつける顔料。
防かび、防藻、消泡など、塗料の性能や扱いやすさを調整する添加剤。
そして水や溶剤。
これらを組み合わせて、ひとつの塗料が作られています。
つまり塗料というのは、
ひとつの成分だけで性能が決まるものではありません。
耐候性。
付着性。
柔軟性。
耐水性。
低汚染性。
施工性。
いろいろな性能を組み合わせながら、一枚の塗膜として成立するように設計されています。
これは無機系塗料でも同じです。
無機成分って何がいいの?
無機物という言葉をかなり簡単にイメージするなら、石やガラス、鉱物などが分かりやすいと思います。
無機系塗料でよく出てくるのが、**シロキサン結合(Si-O)**です。
例えば大日本塗料の「EXTRA無機」では、無機質を構成するシロキサン結合と、フッ素樹脂を構成するC-F結合について、自然光の最大紫外線エネルギーを上回る結合エネルギーを持つため、劣化しにくく耐久性に優れると説明しています。
つまり無機系塗料では、
紫外線によって壊れにくい構造を塗膜の中に取り入れ、長期間劣化しにくい塗膜を作ろう
という考え方が使われています。
だから無機系塗料は、高耐候塗料として扱われることが多いわけです。
じゃあ無機100%にすれば最強じゃないの?
ここが今回の「なんで?」です。
無機的な構造が紫外線に強いのであれば、
無機成分を100%近くまで増やしてしまえば、もっと長持ちするんじゃないの?
と思いますよね。
ところが、住宅の外壁用塗料に必要なのは耐候性だけではありません。
外壁は、一年中同じ状態ではありません。
夏には熱くなり、冬には冷えます。
昼と夜でも温度が変わります。
サイディングやモルタルなどの下地も、温度や水分、建物の動きなどによってわずかに変化します。
その上に塗る塗膜には、
強さだけではなく、柔軟性や付着性なども必要です。
関西ペイントも無機・有機ハイブリッド技術について、無機成分は紫外線や酸性雨に強く耐久性が高い一方、「硬く強い反面、脆さという性質がある」と説明しています。そして有機成分については、建物の動きや変形に対応する柔軟性を特徴として挙げています。
つまり、
硬くて強いことと、住宅外壁用塗料として優れていることは、必ずしも同じではない
ということです。
ガラスをイメージすると少し分かりやすい
ここは、ガラスをイメージすると分かりやすいかもしれません。
ガラスは非常に耐久性の高い材料です。
紫外線を浴びたからといって、一般的な有機樹脂のように簡単に劣化するものではありません。
でも、柔軟な材料ではありません。
曲げれば割れます。
もちろん、
無機系塗料の塗膜がガラスそのものだという意味ではありません。
あくまで、
「耐久性の高い材料をそのまま100%使えば、どんな用途でも優れた材料になるわけではない」
というイメージです。
外壁用塗料には、
「紫外線に強い」
だけではなく、
「下地に付着する」
「外壁の動きにある程度対応する」
「雨や湿気に耐える」
「汚れにくくする」
「現場で安定して施工できる」
といった、いろいろな性能が必要だからです。

だから「無機+有機」という考え方になる
そこで住宅用の無機系塗料で多く採用されているのが、
無機・有機ハイブリッド
という考え方です。
無機の持つ耐候性や強さ。
有機樹脂の持つ柔軟性など。
どちらか一方だけではなく、それぞれの特徴を利用して一つの塗膜を作ります。
これは特定メーカーだけの考え方ではありません。
関西ペイントの「ラグゼMUKI」は、無機の「強さ」と有機の「柔軟性」を融合する無機有機ハイブリッド技術を採用しています。
日本ペイントの「グランセラ」も、有機無機ハイブリッドの無機系塗料として展開され、ラジカル制御技術とセラミックハイブリッド技術を組み合わせています。
大日本塗料の「EXTRA無機」も、無機・有機ハイブリッドに高耐候型フッ素樹脂「ルミフロン」を組み合わせています。
つまり、
「無機系塗料なのに有機が入っている」ことがおかしいのではなく、むしろ無機と有機をどう組み合わせるかが塗膜設計のポイント
になっているわけです。
じゃあ80%くらい無機にすればいいんじゃないの?
100%が必ずしも外壁塗料として最適ではない。
そうすると次に、
「じゃあ無機80%くらいなら、強さと柔軟性のバランスも取れていいんじゃないの?」
という疑問が出てきます。
これも自然な疑問です。
ところが、各メーカーの無機系塗料を調べていくと、ここで少し面白いことに気づきます。
少なくとも今回確認した大日本塗料、関西ペイント、日本ペイントなどの主要メーカー公式情報では、
無機成分の含有率や、無機と有機の具体的な複合比率は前面に出されていません。
その代わりに説明されているのは、
「無機・有機ハイブリッド」
「セラミックハイブリッド」
「フッ素樹脂との組み合わせ」
「ラジカル制御」
といった、どのような技術で塗膜を作っているのかという部分です。
ここは無機系塗料を考えるうえで、かなり重要なところだと思います。
仮に「無機80%」と書いてあっても、その80%って何?
さらに考えてみましょう。
仮にある塗料に、
「無機成分80%」
と書いてあったとします。
すると今度は、
「何に対して80%なの?」
という疑問が出てきます。
塗料缶の中身全体に対してなのか。
水や溶剤がなくなったあとの固形分に対してなのか。
樹脂成分の中での割合なのか。
顔料や充填材まで含んでいるのか。
そもそも、どこまでを「無機成分」として数えているのか。
塗料には、酸化チタンなど無機物に分類される顔料も使われています。
つまり、
「無機○%」という数字だけがあっても、その数字が何を表しているのか分からなければ、メーカーをまたいで単純に比較することはできません。
ここで、
「80%なら高性能」
「60%なら性能が低い」
という単純な話ではないことが見えてきます。
なぜメーカーは含有率より「技術」を説明するのか
ここからは、松下塗料研究会としての考察です。
各メーカーの資料を横断して見ていると、無機含有率の数字そのものより、
無機をどう使っているのか
という説明に重点が置かれていることが分かります。
無機と有機を複合化する。
フッ素樹脂と組み合わせる。
ラジカル制御技術を組み合わせる。
低汚染性を持たせる。
下地への適性を広げる。
メーカーごとにアプローチは違います。
大日本塗料のEXTRA無機でも、「無機を何%入れたか」ではなく、無機・有機ハイブリッド、ルミフロン、ラジカル反応制御という複数の技術を組み合わせた塗膜として説明されています。
関西ペイントも無機と有機の割合ではなく、「強さの無機」と「柔軟性の有機」を融合する技術として説明しています。
日本ペイントもグランセラを「ハイブリッド無機系塗料」と位置づけ、セラミックハイブリッド技術やラジカル制御技術によって性能を作っています。
こうして見ると、
メーカーが作っているのは「無機○%の塗料」ではなく、「必要な性能を持つ塗膜」
と考えた方が分かりやすいと思います。
大日本塗料「EXTRA無機」で考えてみる
当店でも取り扱いのある大日本塗料の「EXTRA無機」は、この考え方を見るのに分かりやすい製品です。
名前には「無機」と入っています。
でも、無機だけで耐候性を作っているわけではありません。
大日本塗料はEXTRA無機について、
無機・有機ハイブリッド+ルミフロン+ラジカル反応制御
という構成で説明しています。
無機質を構成するシロキサン結合。
フッ素樹脂を構成するC-F結合。
さらに紫外線による塗膜劣化を抑えるラジカル反応制御。
これらを組み合わせています。
さらに大日本塗料自身が、
無機質とルミフロンを「バランス良く配合」することで高い耐候性を持たせている
と説明しています。
この「バランス良く」という表現は、今回のテーマを考えるうえで面白いところです。
「できるだけ無機を増やす」という説明ではありません。
異なる性質を持つ材料や技術を組み合わせ、塗膜全体として性能を作る。
これが無機系塗料を見る一つのヒントだと思います。
無機成分は多ければ多いほどいいの?
ここまで来ると、最初の疑問に対する答えも見えてきます。
必ずしも、多ければ多いほどいいとは言えません。
無機的な構造を利用することは、高い耐候性を作るうえで有効です。
しかし、外壁用塗料として必要なのは耐候性だけではありません。
関西ペイントが説明しているように、無機の硬さや強さには脆さという側面があり、そこへ有機の柔軟性を組み合わせるという考え方があります。
さらに実際の製品では、低汚染性、防かび・防藻性、施工性、下地適性なども一緒に設計されています。例えばEXTRA無機も、耐候性だけでなく低汚染性、防かび・防藻性、幅広い下地適性などを特徴として挙げています。
だからメーカーは、
無機含有量を限界まで増やす競争をしているというより、塗料として必要な性能をどう成立させるかを考えている
と見る方が自然です。
塗料は、
「無機成分の多さ選手権」ではありません。
日本の外壁を考えても「バランス」は大切
日本の住宅外壁は、かなり複雑な環境に置かれています。
強い紫外線。
夏の高温。
梅雨の湿気。
長雨や台風。
冬の低温。
さらに、外壁材そのものの動きもあります。
だから、
「とにかく紫外線に強くて硬い塗膜を作ればいい」
とはなりません。
高耐候性を持たせながら、外壁用塗料として必要な付着性や柔軟性、耐水性、低汚染性、施工性なども成立させる必要があります。
無機系塗料を考えるときに重要なのは、
無機の性能をどこまで高めたかだけではなく、他の性能とどう両立させているか
なのだと思います。
「無機が多いと酸性雨で白くなる」はどう考える?

無機系塗料については、
「無機成分が多いと酸性雨の影響で白くなる」
という話を聞くことがあります。
ただし、ここは少し慎重に考えた方がよさそうです。
少なくとも関西ペイントは、無機成分の特徴として紫外線だけでなく「酸性雨などにも強く耐久性が高い」と説明しています。
そのため、
「無機含有率が高いほど酸性雨で白化しやすい」
と単純に結びつけることはできません。
もし白化などの外観変化が起こるのであれば、
使われている無機成分の種類。
樹脂との組み合わせ。
塗膜構造。
水分との反応。
下地。
施工条件。
など、製品ごとの設計まで見て考える必要があります。
ここについては、単純な「無機含有率」だけから判断するのではなく、個々の製品についてメーカーに確認すべき部分だと考えています。
そもそも「無機に近い塗料」は存在しないの?
ここでもう一つ疑問が出てきます。
「無機だけでは塗料にならないなら、無機に近い塗料そのものは存在しないの?」
実は、そんなことはありません。
海外には、一般的な住宅用の無機・有機ハイブリッド塗料とは異なる、シリケート系、いわゆる鉱物系塗料があります。
例えばドイツのKEIMには、無機顔料や鉱物系充填材と、純粋な液体ケイ酸カリウムを結合材として使用するシリケート塗料があります。
つまり、
「無機に近い塗料を作れないから、仕方なく有機を混ぜている」
という話ではないのです。
一般的な住宅塗り替えで使われる無機・有機ハイブリッド塗料と、こうした鉱物系シリケート塗料では、塗膜を作る仕組みや適した下地、用途そのものが違います。KEIMもシリケート塗料について、ケイ酸カリウムを結合材として使用する鉱物系塗料として説明しています。
目的が違えば、塗料の設計も違う。
ここでもやはり、
「無機が多いほど上」という単純な順位にはならないわけです。
松下塗料研究会として見る「無機系塗料」
無機系塗料を調べていると、
「無機だから長持ち」
という説明までは比較的よく見かけます。
でも、そこで終わると、
「じゃあ何%入っているの?」
という疑問が残ります。
そして調べてみると、主要メーカーの公式資料では、その含有率や複合比率そのものはほとんど表に出ていません。
そこでさらに、
「じゃあメーカーは何を説明しているの?」
と見ていくと、
無機・有機ハイブリッド。
フッ素樹脂。
セラミックハイブリッド。
ラジカル制御。
低汚染技術。
と、各社それぞれ違った塗膜設計が見えてきます。
ここが、無機系塗料を見るときに一番面白いところだと思います。
「無機が何%入っているか」を競っているのではなく、「無機の長所をどう塗膜に活かすか」を各メーカーが考えている。
同じ「無機系塗料」という名前でも、そこにはメーカーごとの考え方があります。
だから無機系塗料を比較するときは、
単純な無機含有率だけを見るのではなく、
どんな無機技術を使っているのか。
何と組み合わせているのか。
最終的にどんな性能を持つ塗膜を作ろうとしているのか。
そこまで見て初めて、その塗料の特徴が分かってくるのではないでしょうか。
結論:無機系塗料は「100%を目指す塗料」ではない

今回の疑問。
「無機系塗料って、なんで100%無機じゃないの?」
その答えを一言でまとめるなら、
住宅外壁用塗料に必要なのは、無機成分の多さではなく、塗膜全体としての性能だからです。
無機には、高い耐候性を作るうえで大きなメリットがあります。
でも外壁塗料には、
耐候性だけではなく、
付着性。
柔軟性。
耐水性。
低汚染性。
施工性。
下地との相性。
さまざまな性能が必要です。
だから、
無機の長所と有機の長所を組み合わせる。
さらにメーカーによっては、フッ素樹脂やラジカル制御技術なども組み合わせる。
そうやって一つの塗膜を作っています。
では、
「無機80%ならいいの?」
という疑問についてはどうでしょうか。
今回主要メーカーの資料を調べても、そもそも無機含有率や無機・有機の複合比率はほとんど公表されていませんでした。
そして仮に「無機80%」という数字があったとしても、
何に対する80%なのか。
何を無機として数えているのか。
そこが分からなければ、別メーカーの塗料と単純に比較することはできません。
だから無機系塗料を見るときに重要なのは、
無機が何%入っているかだけではなく、その無機を何と組み合わせ、どのような塗膜を作ろうとしているのか。
無機系塗料は、
無機成分の割合を競う塗料ではなく、無機の長所と有機の長所をどう組み合わせるかを設計した塗料。
そんなふうに考えると、
「無機系塗料って100%無機じゃないの?なんで?」
という疑問の答えが、少し見えてくるのではないでしょうか。



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